極道に過ぎた、LOVE STORY
 「あっ。昨日の……」

 「昨日は、本当にごめん。染みにならなかった?」

 「ええ。大丈夫」

 後ろに座っていた学生が、コソコソと話し出したのが分かった。でも、彼は動じる事なく、そのまま隣の席に座り続けていた。


 教授が入ってきて、講義が始まり、周りは静かになった。

 「ねえ。この課題、一人でやるの大変だろ?」

 「別に……」

 「嘘だ。多分、ペア決められるよ」

 「どうして分かるのよ」

 「俺、この講義二回目だから」

 「はあ?」

 「俺、この学部の4年、入谷康(いりたにこう)この教授の講義、単位落としちゃってさ」

 「ああ、そう」

 私には関係ない事だ。だが、彼のいう通り、隣同士ペアになって、レポートを作成するものだった。しばらく、ペアでやらねばらなない講義が続くらしい。


 「ねえ。この後、時間ある? レポート課題、先にやっておかないか?」

 「一人でやれるところをやって、次の講義で擦り合わせればいいのでは?」

 今までも、グループでやらなければならい課題も一人でやって来たのだから、どうって事ない。

 「それがなかなか難しいんだよ。先にやっておいた方がいいって」

 「でも、あなた単位落としたのよね?」

 「だから、その教訓を生かそうと思っているだよ。色々言ってないで。やっちまおう!」

 そう言うと、康は私のレポートを持って歩き出した。


 「ちょっと、まだ、やるって言ってない!」

 「カフェでいいよな?」

 仕方なく、康の後に続いてカフェに入り、空いている席に座った。


 「ちょっと待ってて。何がいい?」

 「自分で買いに行くからいい」

 そんな私の言葉は耳に入らなかのように、康はカウンターに向かって行ってしまった。そして、アイスコーヒーを二つ持ってきた。

 まあ、アイスコーヒーにするつもりだったからいいのだけど。

 「ありがとう。課題、やってしまいましょう」

 テーブルにレポートを広げる。


 「そうだな」

 康もレポートを広げると、スラスラとペンを走らせた。私も、ペンを握る。

 「まあ、こんなとこかな?」

 書き上げたレポートを、康が差し出してきた。自分の書いたものも、康に見せる。

 「よく、この時間でここまで纏められるわね」

 康の書いたレポートは、要点がしっかりまとまっていて、課題について討論しやすく興味の湧くものだった。

 「ああ、二度目だからな」

 「そうだったわね…… でも、これで単位落ちるって……」


 「ああ、去年は色々あって、後半出席できない事が多かったんだ」

 「そう、ねえ、これどういう意味なの?」

 レポートの一部を、康に見せた。単位を落とした理由に興味はない。それより、レポートの方に興味が湧いた。

 それから、しばらく課題のやり取りに、お互いに意見を出し合った。あっという間に時間が過ぎてしまった。
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