極道に過ぎた、LOVE STORY
 「お嬢の事もですよ。さあ、そろそろ行きましょう。迎えが来たようです」

 羽柴は、今まで気づかなかったが怖い男だ。 

 窓の外を見ると、組の黒い車が止まっいる。


 「そうだな」

 羽柴と並んで病室を出た。


 「あら、お兄さん退院? おめでとうね」

 歩行器で歩くお婆さんが声をかけてきた。

 「ええ。足、お大事にして下さい」

 ええー!


 羽柴が笑ったよ。


 「おじちゃん退院するの? また、オセロやりたかったのに」

 一年生くらいの男の子が駆け寄ってきた。

 「坊主も、もうすぐ退院だろ? 今度は友達とやれな」

 「うん。おじさんも友達とやれな」

 「そうだな」

 羽柴はふっと笑って、男の子の頭を大きな手でガシっと撫でた。


 「羽柴さん、退院おめでとう」

 あちらこちらから、声をかけられる。

 玲香も矢澤さんも駆けつけてくれた。


 一体この男は入院中どんな生活を送っていたのだろう。組では見せない、羽柴の穏やかな表情に、やはり、羽柴にはもっと別の人生の選択肢があったのではないかと思ってしまう。

 だけど、組にとっても、私にとっても、羽柴は無くてはならない人だった。


 「お嬢」

 羽柴が振り向いた。


 「何?」


 「お嬢は、素晴らしいお仕事を選ばれましたね」


 羽柴の顔は、今まで見たことのない満足気な笑顔だった。


 「うん」

 私も、羽柴に笑顔を向けた。


 羽柴、ありがとう……


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