君が愛おしくて。クールなエリートSPの甘く一途な溺愛事情
それから、パンフレットを参考に、まだ見てないエリアを回った。
「次はどこに行こうか?」
「そうだね……」
花音が鞄からパンフレットを取り出そうとすると、床に一枚の写真が落ちる。
(ん……?)
どこかで見たことあるような、その写真を不思議に思いながら、拾い上げて驚いた。
「これって……」
それは、高校時代、二人で撮ったあの写真だった。
「あっ、それは……」
少し気まずそうに口籠る花音。
「……この写真、ずっと持ってたの?」
彼女は俯きがちに、小さく頷いた。
「お守りにして、持ち歩いてた」
「まいったな……」
まさか、彼女もまだ持っていたなんて。
「ご、ごめん。昔の写真、いつまでも」
僕が困っていると思ったのか、彼女は焦ったように謝る。
「いや、そうじゃないんだ。僕もその写真、持ってる」
「えっ」
「職場のロッカーの中に、貼ってるんだ」
惨めったらしいとも思った。自分から別れを告げといて、いつまでも写真を持ち続けるなんて。でも、この写真を捨てることなんてできなかった。
「ふふふっ……」
口に両手を当て笑みを漏らす彼女。ロッカーに貼っていたのは、さすがにやりすぎだっただろうか。
「私たち、どこまでも両思いだね」
彼女は幸せそうに笑うと、ぬいぐるみと同じように、大事そうに写真を胸に抱えた。
「私ね、離れていた十年間、この写真があれば、要くんとの思い出があれば、生きていけると思ったの。でも、思い出だけじゃ全然ダメだった! 私には、要くんが必要。要くんと生きる日々が、私の人生でなくてはならない一番大事なもの」
「花音……」
十年間、彼女を忘れたことは片時もなかった。僕は、彼女なしでは生きていけない。それは彼女も同じ。それが、たまらなく嬉しかった。
腕時計を見ると、日暮れまで一時間ちょっとあった。
(まだ間に合う)
「君に見せたいものがあるんだ」
建物から出ると、車に乗り水族館を出る。
「ねえ、どこに行くの? 見せたいものって?」
「それはついてからのお楽しみだよ」
花音は気になっていたけど、僕がそう言ったきり何も言わないのを見て、教えてもらえないと諦めたようだった。
車は郊外から離れていき坂道を上がっていく。
(ここからの景色を見るのも久々だ)
この場所に初めて来たのは、彼女と出会うよりずっと前、遠いい昔だ。
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