君が愛おしくて。クールなエリートSPの甘く一途な溺愛事情
気合を入れ仕事を再会する。ガラスの花瓶に半分ほどお水を汲むと、水揚げを終えたカーネションを入れ、他の花との色合いや大きさのバランスを見て陳列棚に並べていく。
出来上がってきた売り場を見て私は頷いた。
(思った通り。散らばすように置いた方がいい)
同系色の花同士で陳列させると、まとまり感が出て綺麗に見えるけど、あえて色を混ぜて置くことで、華やかに見せることもできる。
(あとは……)
店の中心、入って一番目につく場所には、宣伝用として作った手作りのポップと共に、ムーンダストを置く。
(うーん……ただ置くだけじゃいまいち注目度に欠けるな。もっとこう……目立たせないと)
何か高さを出せる物がないかと、作業台の周りを探す。
「髪、今日は下ろしてたほうがいいんじゃねーの」
「え?」
しゃがみ込んだまま顔を上げ、たく兄を見る。
「どうして?」
髪はいつも通り、ポニーテールにしている。
「どうしてって……」
たく兄は気まずそうに私から顔を背けると、自分の首の後ろを指さした。
「痕、ついてるけど」
そう言われ、私は瞬時に両手で首元を隠した。
(あの時か……)
恥ずかしくて、着ていたシャツの襟元を立てて隠す。
「あいつとは仲良くやってんの?」
ぶっきらぼうにそう聞いてくるたく兄。
「え、あ……う、うん」
「ふーん……」
(……前も思ったけど、やっぱり、たく兄は要くんのことが気に食わないみたい)
仲良くしてほしいのが本音だけど、人も合う合わないがある。
(でも、そもそも何で気に食わないんだろう。あの時、一瞬会っただけなのに)
「たく兄はさ、要くんのこと、嫌い?」
思い切ってそう聞いてみると、少し間をあけて答えが返ってくる。
「いけすかない奴だと思う」
(いけすかない奴……つまり、好きではないってことだよね)
「なんかあったらすぐに言えよ」
「なんかって、大丈夫だよ」
私が笑ってそう答えると、たく兄はいつものごとく、頭を撫で髪をぐちゃぐちゃにする。
「はい、汚くなったことだし下ろしてろよ」
「汚くしてる自覚あったんだね」
たくに兄は悪びれる様子もなくひらひらと手を振って、裏口から出ていく。
(何回言ってもやめてくれないんだから)
髪をほどくと、首元に手を置く。
触れた指先から、要くんを感じるようで。
(他の人に知られたことが、余計に恥ずかしい……)
「もー! 要くんってばっ!」
恥ずかしさを払い除けるようにそう言い放つと、髪をハーフアップにして、開店準備を急いだ。
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