君が愛おしくて。クールなエリートSPの甘く一途な溺愛事情
「あいつ、ほんとにSPだったんだな」
キッチンカーから降り、私の隣に立ったたく兄は、気に食わなさそうにそう言いながら、遠くの要くんを見ていた。
「疑ってたの?」
「いや? てか……前も思ったけど、その靴ってあいつから?」
たく兄の視線が、私の足元に落とされる。
「うん、前のがダメになちゃって、それで要くんが新しいのを買ってくれたの」
太陽の光を浴びると反射でエナメルが光る。控えめに付いている小さなリボンは、エナメルの良さを引き立てながら、華やかな存在感を放っている。
要くんがくれたフラットシューズのおかげで、仕事が一段と楽しくなったし、やる気も出る。この靴が一緒なら、どこまでも歩いていけそうだ。
「でも、要くんからだってよく分かったね?」
「お前らしくないから。お前はそんな派手なの、自分じゃ選ばないだろ」
(確かに、前に履いていたフラットシューズは無地の布素材だったし、それに比べたら、リボン付きのエナメル素材って、派手かな)
「でも、気に入ってるから」
私が機嫌良くそう言うと、たく兄はどこか不機嫌な顔をした。
「……そうかよ」
素っ気なくそう言うと、たく兄はキッチンカーの中に入ってしまう。
(たく兄、いつもいつも、要くんのこととなると素っ気ないし、今は自分から要くんの話をしたのに、あからさまに嫌な顔しなくてもいいのに)
「何なんだろう……」
そんなことを思いながら、再び要くんがいる方へ視線を向ける。
(__え……)
見えた人物に驚いた。
演説台から少し離れた位置に、愛美さんが立っていたのだ。
(愛美さんが、どうして)
その光景に、胸がざわついた。
「花音、ちょっとこっち来てくれ」
たく兄の呼びかけが聞こえながら、私の視線はその場に釘付けになってしまう。
(伊勢谷元総理がいるからだよね……?)
「花音」
「今行く!」
何も心配はいらない。きっと大丈夫だ。そう言い聞かせながら、私は仕事に戻った。
< 73 / 115 >

この作品をシェア

pagetop