君が愛おしくて。クールなエリートSPの甘く一途な溺愛事情
予定時刻を数十分過ぎて、選挙演説は始まった。
特に問題が起こることなく、若葉議員の演説が終わり、マイクは伊勢谷元総理の手に渡っていた。
(ん……? 何だあいつ)
演説台から三十メートルほど離れた位置に、不審な男の姿があった。黒いパーカーにデニム姿、身長は百七十センチほどの細身。フードを深く被って俯いていて、顔はよく見えない。
(様子が変だ)
男は一見、平然としているが、どこか落ち着きがないように見えた。
(注意した方が良さそだな)
胸元のマイクに向かって声を顰める。
「こちら郡司。演説台から前方に三十メートルほど離れた位置に、不審な男の姿を発見。黒いパーカーにデニム姿、身長は百七十センチほどの細身。フードを被っていて、顔は……」
そう言ったところで、口を噤んでしまった。
(……似ていないか? あの時、花音を襲おうとしたストーカーに)
「郡司さん?」
言葉が途切れたことで、イヤモニから上野が聞き返してきた。
「……よく、見えない」
男は足早に、人混みの中へ消えていった。
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