君が愛おしくて。クールなエリートSPの甘く一途な溺愛事情
「たく兄、こないだはありがとう。急にいなくなってごめんね」
倒れた私に代わって、たく兄は予定していた閉店時間を変えることなく、お店を営業してくれた。
「体はもう大丈夫なのか」
「うん、この通り、もう元気だよ」
私が肘を折り曲げて元気ポーズを見せると、たく兄は「ふっ」と笑う。
「ならいい」
ダンボールを床に下ろし終わると、たく兄は台車の押し手に手をかける。
「次は来週の月曜日だな。じゃあ……」
そう言って、たく兄は店を出て行こうとしてしまう。
「待ってたく兄……!」
思わず呼び止めると、たく兄は足を止め振り向く。
「えっと……その、あの時の」
「何も言わなくていい」
「えっ?」
「花音の気持ちはあの時に伝えてもらってるし、お前がこれから先も、俺を見ないことも分かってる。それに……」
たく兄は少し何かを考えるように俯くと顔を上げた。
「俺はあいつには勝てない」
私に危険が近づいていること悟った要くんは、無我夢中で私を探した。いつも冷静な要くんの余裕のない姿に、たく兄はとても驚いたそうで。
「お前がストーカー被害に遭っていることにも、俺は気づけなかった。でもあいつは、ずっとお前を守ろうとしてくれていたんだろ?」
もうお手上げだと言うように、たく兄は肩をすくませ、苦い笑みを浮かべた。
「俺とお前は、今まで通り仲の良い幼馴染だ」
「たく兄……」
涙腺が緩む。
唇を噛み締め、涙をグッと堪える。
「たく兄、私……私ね、要くんと結婚する。彼と幸せになる」
「ああ……おめでとう。俺はこれからも、お前の幸せを願っている」
たく兄の優しさと思いやりに胸が締め付けられて、緩んだ涙腺が崩れそうなる。
(……今ここで私が泣くのは違う)
涙を見せまいと、私はたく兄に背を向けた。
「おー泣くな泣くな」
「泣いてないよっ」
「はははっ! いやここは俺が泣くべきか」
たく兄はそう言い、豪快に笑うと、隠れて大粒の涙を流す私の頭に手を置き、がしがしと撫でる。
「もしあいつに何か嫌なことされたら、いつでも言え。俺がぶん殴ってやるから」
「要くんはそんなことしないよ」
「ははっ、確かに……そうだな」
無造作な撫で方に顔を上げると、目を細めて笑っているたく兄の目に、光るものが見えた気がした。
それに。
気のせいだろうか。大雑把な手つきは、どこか優しかった。
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