引きこもり婚始まりました〜Reverse〜
勝手に押し倒すのは、暴力に近いと思ってたのに。
「ごめん……」
止まらなかった。
嫌われたくない、大切にしたい、そうできそうもないのが恐ろしくて、いっそ拒んでほしい。
「何が……? 」
そう思うのに、抵抗されなくて安心するとか最低だ。
「こんな乱暴して」
女神様がしたい気分の時じゃなきゃダメだ。
「好き」という大義名分を振りかざして流すなんて、覆い被さっている側のエゴに過ぎない。
「優冬くん……」
「そんなことないよ」「大丈夫だよ」
そう、いつもの彼女なら言ってくれたと思う。
でも、この時のめぐはなぜか、普段と違って。
「して」
彼女が迷ったのは、ほんの一瞬だけ。
俯くか俯かないか分からないくらいの、瞼の下り方だった。
まるで――いや、完全に射抜かれてしまった。
ほんのすぐそこ――俺とベッドの間にいてくれる、女神様の瞳に。
「……ごめん。さすがに、君に委ねすぎた」
「本当だよ」と、その謝罪はすんなり受け取ってもらえて。
頬を撫でると、拗ねたように顔を背けるのも可愛い。
「……俺は、めぐに求められてるって思いたいんだね。許可をもらえたんだって、過去の自分に優越感に浸りたいだけ」
「だけ、なんてことない。ちゃんと確認してくれるのは嬉しいよ。大切にしてくれてるのも伝わる。私がすっかり忘れちゃったことも、優冬くんは覚えてくれてて……同じ傷をつけないように守ってくれてるのも知ってる」
彼女の心も身体も、傷なんてついていいはずない。
何度もそう言ってるじゃないかと、今度は俺の方が拗ねた顔をしていたのかも。
「でも、私だって優冬くんが好き。気持ち、疑わないでくれるなら、もっと……」
――もっと、私からも受け取ってほしい。
「…………た、大したものはあげられてないかもしれないけど。でも、私だって、そういう気持ちで、あの……。……ごめん、やっぱり何でもな……」
「……やだ。ちょうだい」
そこまで言ってもらえて、どこも反応しないでいられるほど、俺は子どもでも弟でも、ましてや単なる信者ではいられない。
「嬉しい。めぐが許してくれるものだけ……許してくれるところまででいいから。だから、もっと俺に……俺だけに、ちょうだい」
我慢してたのに。
今でさえ、夢を見ているみたいに幸せで、これ以上のことは存在し得ないと心から思ってた。
「……俺、欲しいよ。もっと……」
女神様が紐解いたのは、パンドラの箱に結ばれたリボン。
君は、そんな危ないことをしてるんだよと耳元で囁きながら、取り消さないでと人差し指で彼女の唇を塞ぐ。
「……く、くれてるのは、やっぱり優冬くんだと思う」
突然――ではなく、彼女が煽った結果なのに、攻められてちょっと戸惑って。不貞腐れたみたいなのがまた可愛いでしかなくて、笑ってしまう。
「そうかな。そんなことないと思うよ。だって、気づいてると思うけど俺、今……ただの男でしょ」
そんなの、絶対にダメだと自制してた。
だってそれは絶対的な禁忌で、彼女に男が近づくたび軽蔑してた姿だったから。
「どうしよう。嫌われないか怖いのに、止まれそうもない……。お願いだから、望んでなかったら拒んで」
分かってる。
そう懇願したって、めぐはきっと。
「望んでなかったら、大人しくなんてしてないよ」
――そう、更に煽りまくる。