聖女のいない国に、祝福は訪れない【電子書籍化】
「セドリック! ニセラの雨避けになってくださーい!」
「断る」

 ドサクサに紛れて彼にタックルを仕掛け、抱きつこうとしてきたニセラを拒否した瞬間。セドリックは屋内の柱に身を隠し、涙を流しながらじっとこちらを見つめるフリジアと目が合う。

(フリジア……?)

 普段王城内は安全だが、こうしてニセラの侵入を許している以上……いつ何が起きるかわからないと動物達は警戒しているのだろう。
 普段は誰かしらが彼女の周りを守護していたが、今日はその姿が見当たらない。

(まずいな……)

 彼女に勘違いされたと知ったセドリックは、今すぐ目の前にいる女を突き飛ばして彼女の誤解を解きたい気持ちでいっぱいだった。
 だが、この状況でフリジアを追い駆ければ――邪魔な女と愛しい人が鉢合わせてしまう。

「いやーん。セドリックったら! 酷いですぅ!」

 セドリックは愛する人が黙って踵を返し、寝室へ戻る姿を遠くから見つめることしかできなかった。

(これは俺に対する罰か)

 つねに誰からも愛される存在であるべき神の愛子の心を乱した地に、天罰を下すかのように……。
 急激な天候の変化は、聖女の心が揺らいでいる証拠だ。
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