聖女のいない国に、祝福は訪れない【電子書籍化】
(なぜ偽聖女を……)

 乱入してきたのは、フリジアを守ることに命を賭けている――好戦的な狼だ。
 動物は仲間達とともにニセラを取り囲み、唸り声を上げて威嚇する。

「きゃあ! もう、なんなんですかぁ? こんなこわーい動物達を放し飼いにするなんて! アーデンフォルカ帝国って、物騒な国すぎですぅ!」

 ニセラは動物達から敵意を示されても悪びれもなく喚いていたが、彼女は自身が致命的なミスを犯したことに気づいていないようだった。

 ――聖女は生きとし生けるもの全てに愛される。

 動物達にこうして敵意を向けられている時点で、聖女を騙っているのは明らかであると言うことを。

「二度と我が帝国に、足を踏み入れるな」
「ガルルル……っ」
「んもう! ニセラを好きになってくれなかったこと、いつか後悔させてやりますぅ!」

 狼達に囲まれたのが効いたのか。
 ニセラは泥水をかき分けるように足を動かすと、そのまま王城をあとにした。
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