聖女のいない国に、祝福は訪れない【電子書籍化】
「俺が愛しているのは、リエルル公爵家のフリジアだ。聖女だからでもなければ、あの女の代わりでもない」
「陛下……」
「君を傷つけて、すまなかった……」

 セドリックはアーデンフォルカ帝国の皇帝だ。
 頂点に君臨すべき人間が下々の者へ頭を下げることが、どういった意味を齎すのか。
 理解していないわけがないだろう。

(私が悪い聖女であれば……)

 彼にとってフリジアは弱みだ。
 彼女が悪者であれば、セドリックは傀儡になっていたかもしれない。

「謝罪をするべきなのは、私の方です……。心を乱して、民に迷惑を掛けてしまいました……」
「気にするな。原因が俺にあると知れば、誰も君を責めることはないだろう」
「陛下……。私は……」
「返答は不要だ。俺が君を誰よりも一番愛しているのだと、忘れないでいてくれたら。それだけで構わん」

 好きになったフリジアが、聖女だっただけ。
 その言葉は彼女の全身にじんわりと行き渡り、心臓の鼓動を早めた。
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