聖女のいない国に、祝福は訪れない【電子書籍化】
(陛下が私を、愛している……?)

 抱きまくらを失ったフリジアは、何度目かもわからぬ愛の告白を受け。
 ぽんっと顔を真っ赤にしながら狼狽える。
 その言葉の意味をうまく受け入れられなかったからだ。

「そう、ですよね……」

 視線を彷徨わせた彼女は、すぐに彼が好意を告白した理由に気づく。
 セドリックを嫌ったフリジアが、他国へ逃れることを恐れた上での発言だと言うことに。

(私がいなくなれば……。アーデンフォルカ帝国が荒れ地になってしまう……)

 たとえ彼の想いが嘘だとしても。
 フリジアはこの地を守るために、セドリックの言葉を受け入れるしかないのだ。

「……俺は民のために、君のご機嫌取りをしているわけではない」
「わかっています……」
「違う」
「陛下が誰に好意を抱いていようとも、私には関係のないことです……。出過ぎた真似を、いたしました……」
「フリジア」

 セドリックは彼女のことを家名で呼ぶ。
 名で呼ばれるとは思わなかったフリジアが驚き顔を上げれば、彼は先程の告白に嘘偽がないことを証明するように彼女を抱きしめた。
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