聖女のいない国に、祝福は訪れない【電子書籍化】
「兄弟がいれば、これほど寂しい思いをしなくて済んだのにと……。俺は両親が亡くなった際、彼らが物言わぬ躯であることをいいことに、何度も涙で枕を濡らしていた」

 フリジアは双子の妹とともにこの世に生を受けたが、セドリックには兄弟がいない。

 癒やしの力を酷使しすぎて体調を崩し、そのまま亡くなった母。
 彼女を失った喪失感に耐え切れず、自ら命を絶った父。

 一人残された彼には信頼のおける大人達が山程いたが、気心の知れた同年代の家族がいれば支え合って生きていけたのにと、かなり長い時間苦悩していたようだ。

「だが、君の境遇を聞く限りでは……。兄弟など、いなくて良かったのかもしれないな」
「……はい」

 セドリックの願望は、あくまで理想だ。
 誰もが兄弟仲良く支え合って生きていけるわけがない。
 フリジアとニセラのように、啀み合うことだってあるだろう。
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