御曹司さま、これは溺愛契約ですか?
「ふぁ……っ……ぅ」
けれど翔の左手に肩を抱かれ、右手に顎を掴まれている状態では逃げることが出来ない。下げていた腕を上げて翔の身体を押し返そうとするも、上手く力が入らず互いの身体の間に腕をねじ込むことすらできない。
「ん……ぁっ」
翔の舌が歯と歯の間からさらに深くまで侵入してくる。柔らかな感触が美果の舌に触れると、顔の位置をずらした翔がさらに深く口付けてくる。
翔の舌に口の中を蹂躙される。舌の表面を擦り合わせるように、熱の塊が美果の舌を激しく吸って、食むように貪る。
こんな大人のキスなんて初めて――否、キスそのものが初めてだ。こんな風に激しい口付けをする人なんて、こんなに強い感情をぶつけてくる人なんて、これまでの美果の人生の中には存在しなかった。
「ん、ゃ、……やだっ」
そう考えると肩に力を込める翔の手が急に怖くなった。舌同士が触れる感覚が気持ちいい……そう思ってしまう自分が恥ずかしくなった。
息継ぎをしようと唇の間にほんの少しの空間が生じた瞬間、顔を背けて翔のキスから逃れる。翔は右手で美果の頬を包んで再度口付けようとしたが、一瞬早く翔の唇の前に指先を滑り込ませてそれを拒んだ。
「だ、だめ、です……!」
「……美果」
それでも翔は美果を離すまいと肩を抱いて、またキスしようとする。先ほどまでは確かに怒っていたはずなのに、激しいながらにも優しく口づけてくる翔の心がわからなくて、思わず拒否の言葉を呟いてしまう。