【Quintet】
 布団を片付けた一階に七人が集まり、七人揃っての“いただきます”で朝食が始まった。

『俺達がこうやって女連れで気軽に出歩けるのもメディアに顔出ししてないからできることだよな』
『顔が売れてたら週刊誌に勝手に写真撮られたり、ファンに隠し撮りされてネットに流されたりするからな。蓮なんていっつも週刊誌に張り付かれて気の毒だよ』

 サンドイッチを頬張る晴と星夜が口々に言う。
一緒に暮らしていると時たま忘れかけるが、この四人は芸能人だ。四人とこうして気軽に出掛けられるのも彼らが本名と素顔を非公開にしているからこそ。

「でもどうして顔を公開しないで活動してるの? 顔を公開しないとライブだってできないのに」
「うんうん。UN-SWAYEDは正体が謎なところが良いって意見もあるけど、顔出ししてないからテレビやライブで観られなくて寂しいよね。いつか音楽番組にも出て欲しいよ」

沙羅と美月の率直な意見に四人は嫌な顔もせず穏やかに笑っていた。四人を代表して悠真が答える。

『いつかはメディアに顔を出す時が来ると思うよ。でもそれは今じゃないんだ。容姿に自惚れているわけじゃないけれど、外見だけを評価されて肝心の音楽が評価されなくなるのが嫌なんだよ。俺達はアイドルじゃなくてアーティストだから純粋に音楽の力だけで評価されたい。顔を出さないのはそれが理由だよ』

 UN-SWAYEDはアイドルではなくアーティスト。音楽の世界は外見ではなく音で勝負して売れなければ意味がない。
< 139 / 433 >

この作品をシェア

pagetop