【Quintet】
 スタジオの扉が開いてマネージャーの不破が悠真を呼んだ。社長からの呼び出しだ。

不破と連れ立って事務所最上階の社長室に向かう。ダンディズムの塊のような容姿の吉岡繁が社長席に尊大に座っていた。

『曲作りは順調か?』
『まあまあですね』
『そう言う時は上手くいっていない時だな』

 吉岡はかつては演劇界のスターだった。悠真は彼がまだ俳優、吉岡繁だった頃からこの男を知っている。
それはつまり吉岡社長は悠真の幼少期を知っているということ。

蓮しかり、吉岡社長しかり、幼少期を知られている人間にポーカーフェイスを決め込んでも見抜かれてしまう。

『12月25日と26日の2日間、場所は日本武道館』
『25日……ですか』
『お前の誕生日だ。素敵なバースデープレゼントになりそうだな。9月にメディア発表、ファンクラブ立ち上げは10月、ファンクラブ先行でチケット販売開始。詳しい日程は決まり次第お前のパソコンに送る』

社長の言葉を頭の中で反芻する。当日が12月25日ならあと半年もない。

『9月にメディア発表なら三人にはいつ話すんですか?』
『三人にも相応の心構えをしてもらいたい。8月中にお前から話してくれ。タイミングは任せる。それと結城家とは話がついてるから心配いらないと星夜に伝えておくように』
『星夜の親父さんがよく承諾しましたね』
『利害の一致と言ったところだ。これもビジネスだよ。お前ならわかるだろ?』

 上品ぶったタヌキ野郎と心の中で毒気づく。星夜の父親を納得させるためにどんな手を使ったのか大方の予想はつく。
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