【Quintet】
 所詮は金と人脈だろう。服飾業界のYUUKIインターナショナルグループとしても芸能界との繋がりは喉から手が出るほど欲しいものだ。

『そうそう、岡山の土産はやっぱりきびたんごかな。不破くんも悠真達にお土産頼んじゃいなよ』
『いや、僕は……』

 突如、社長に話を振られた不破は困惑気味だ。社長のテンションの落差には誰もついていけない。

『話が終わったならスタジオに戻ります』
『……悠真』

 踵を返そうとした悠真は足を止めた。舞台畑で磨かれたよく通るテノールの声は、旅行の土産をねだっていた時のものとは明らかに違う。
ここぞと言う時に発声を変えるのが吉岡の武器だ。

『岡山旅行、充分に注意して行きなさい』
『注意……とは?』

 吉岡の真意を探ろうと試みても悠真以上にポーカーフェイスな吉岡の腹の底は見えない。

『世間に顔を晒してはいなくとも君達が芸能人であることは忘れないように。女絡みのゴタゴタはタブーだよ。わかったね?』

女絡みのゴタゴタと指摘されてひやりとした。それは沙羅を意味している?

『旅行先で美しい女性と一夜のロマンスなんて、そんな素敵なことはしないようにね。僕は君が一番心配だなぁ。ほら、君が高校生の時もさぁ……』
『……残念ながら俺達も盛りのついた時期は過ぎましたから、軽率な行動はしませんよ。失礼します』

 沙羅との関係を指摘されたのかと思って焦った自分が馬鹿馬鹿しい。それに高校時代の悪行を今さら蒸し返さないでもらいたい。
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