神殺しのクロノスタシス2
何だこの空間は。どうなってるんだ。

ここに、こんな空間があることすら知らなかった。

羽久曰く、「シルナの覗き部屋」だそうだが。

覗き部屋と言うだけあって、壁に切り込みを入れたような窓がついていて。

その窓から、外が見えるようになっていた。

学院長は僕をここに隠し、「ちょっと窮屈だけど、しばらくここにいてね~」と、笑顔で言い、

かつ、お茶とお菓子を置いていった。

別にお茶もお菓子も要らないが、それより外の様子が気になって、気になって仕方なかった。

生徒は、全員学生寮に避難させたと聞いた。

そしてその学生寮には、聖魔騎士団から派遣されてきた魔導師数人が、見張りに立っていると。

その上、学院にも同様に、見張りの魔導師が派遣されていると。

その中には、シルナ学院長、羽久、イレース、なじ…読心野郎も含まれている。

だから心配しなくて大丈夫~と、ひらひら手を振りながら楽観的に言われたが。

内心、全然安心出来なかった。

彼らは、『アメノミコト』の恐ろしさを知らないのだ。

僕は知っている。あの暗殺組織が、いかに残虐非道か。

裏切り者に、一切の容赦はしない。

僕は、ごくりと生唾を呑み込んだ。

もしも、もしも。

もしもここが襲われて、聖魔騎士団の人達が『アメノミコト』の刺客に殺されでもしたら。

僕は今すぐこの隠し部屋を出て、『アメノミコト』に投降しよう。

それで彼らの怒りが鎮まるだろうか?

分からない。多分無理だ。

裏切り者を匿った組織として、粛清の対象となるだろう。

お願いだ。殺すのなら、僕だけに…。

本当は今すぐここを出て、彼らに迷惑がかからないように、遠くに逃げ出したい。

でも、もう逃げるには遅い。

『アメノミコト』の情報網は、広く、速い。

約束の「制限時間」が過ぎ、更に僕から何の連絡もないと来たら、もうとっくに、頭領は僕を裏切り者とみなしているはず。

そして、僕が隠れているこの学院のことも。

彼らが攻めてくるのは、もう時間の問題だった。

僕は、信じてもいない神に祈った。

どうか、僕は。僕だけはどうなっても良いから。

他の人達に、あの優しい人達だけは…。

強く強くそう願った、そのときだった。

学院の校門付近から、爆発音のようなものが聞こえた。
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