神殺しのクロノスタシス2
「それでは、これから実習訓練を始めます」

教官…シルナ・エインリーの分身の一人…が、僕達に向かって言った。

ここはイーニシュフェルト魔導学院の、訓練場。

実習訓練の稽古場である。

実技の授業は、僕達一年生にはほとんど行われない。

学年が上がっていけば、実技の授業も増えるのだが。

一年生は、週に二、三回が関の山。

だがやはり、折角魔導学院に入ったのだから、実技の授業というのは楽しみなもの。

少なくとも、僕以外の生徒にとっては。

皆わくわくとした様子で、杖を握り締めていた。

そんなに楽しみか。

実技とはいえ、一年生の実技なのだから、大したことはしない。

「それじゃあまず、この魔導人形相手に、一人ずつ雷魔法を撃ってもらいます」

おまけに、実技は対人ではなく、この魔導人形相手。

こんなもの、ただのハリボテだ。

ハリボテ相手に魔法の訓練とは。生ぬるいにも程がある。

それでもクラスメイト達は、そんな訓練でも楽しみなようで。

仕方がないので、僕も楽しそうな振りをするしかない。

楽しくもないのに楽しい振りをすることの、なんと苦痛なことか。

しかも。

「はい、じゃあ次、ナジュ・アンブローシア君」

「はい」

実習授業は、僕にとって、若干緊張の場面でもある。

目立ち過ぎてはいけないからだ。

上手過ぎても、下手過ぎてもいけない。

あくまで平均的に、上手くもなければ下手でもない、目立たない程度に手を抜いて。

それも、シルナ・エインリーの分身に、気づかれないようにやらなければならない。

本当の実力を隠していることを、悟られないように。

これが大変難しい。

分身とはいえ、シルナ・エインリーの観察眼は本物だ。

ただ適当に手を抜けば良い、という訳ではないのだ。

「…rhundet」

僕は、力加減に気を付けながら、魔導人形に雷魔法を撃ち込んだ。

上手くも下手でもない、程々にそこそこな威力。

何かを勘づかれてはいないかと、ちらりと教官を盗み見るが。

「はい、宜しい。それじゃあ次の人」

「はい」

…特に、僕を気に留めている様子はなかった。

ホッと一安心。

全く神経を使わされる。

これだったら、退屈な座学の授業を受けている方が、まだマシかもしれない。
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