あの場所へ

3.手紙

俺は自分のベッドの上で転がって,
天井を見上げていた。

部活をしていても,
七海のことで頭がいっぱいで
どこか上の空だった。
大学の陸上部からの誘いがあったことも,どうでもよかった。


ふと,机の上をみると,
七海がくれた文庫本が,
綺麗な状態で放置されていた。


俺はその本をとると,
1冊ずつパラパラと何の気なしにめくっていた。

その時だった。


四つ折にされた便箋が,
本の間から,数枚出てきて床に落ちた。

俺は,慌てて拾った。


 

ようやくここまで来れたのね。
合宿はどうですか?疲れてませんか?
無理をしないでね。   七海


 

怪我はしてませんか。
ちゃんと寝て食べてる?
運動の基本は食よ!!  七海




と,たわいのない俺を励ます手紙だけだった。俺はもう一度,本を確認した。


すると,
一冊だけ明らかに手触りが違うものを感じた。文庫のカバーが,しっかり本体に貼り付けてあった。俺は慎重にそれをはがすと,本とカバーの間に一枚の紙を見つけた。





 見つかっちゃね。
 もう島に帰ってきてるよね。
 そして,私を探しているかな。
 きっと,もう怒ってるよね。
 ごめんね。
 合宿前に心配をかけたくなかったの。
 今,私は本土の病院に入院してます。
 ちょっと体調が悪かったから,
 検査入院を冬休み中にすることに
 なって,心配しないでね。
 時々手紙をだすから。
 上妻くんは部活に学校に頑張って。
 三学期に会えることを
 楽しみにしています。  七海




俺は手紙を読んで,息を呑んだ。


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