花隠し
「そんなこと……言わんでください。俺は、姉さんを危険な目に遭わせたくなかったんだ。あなたが、誰よりも大切だから」
「……」
「姉さんに嫌われたら、俺……本当にひとりになっちまいます」
「……」
「こんな俺でも、生きていていいのだと……唯一のしるべになってくれたのは姉さんなのに……」
守助の声が沈む。
ズキズキと胸が痛むのは、守助の凄惨な幼少期を知っているから。
嫌いになんてなれるわけない。
注いできた愛の数だけ優しく育ってくれた弟を、私はまだ愛してしまっている。
「ごめん、うそだよ。大好き……守助」
毛布から出て、守助のからだを抱き寄せた。
私のためにしたという守助の行動は許せない。
けど、だからといってこれ以上この子の心に傷を増やすのは本意ではない。
私の弟は、もう一生分の傷を負ってきたから。