花隠し
「大好きだからこそ悲しかったの。実里に冷たい守助も。実里のお母さんを見捨てるようなことをした守助も。……認めたく、なかった」
涙が守助の着流しを濡らしていく。
それでも私の髪を撫でる手は優しかった。
「姉さん、前にも言ったはずだ」
黒い瞳が私を映し込む。
「姉さんが酷い目に遭うくらいなら、俺は他の人間の命を捨てることを選ぶ」
「……」
「それは、一生変わりませんよ」
形の良いくちびるが私の涙を吸い取る。
こくんと喉仏が上下したあと、滴で湿ったそれをしっとり肌に押しつけてきた。
「愛してます」
「……私、も」
熾火のような怒りと、どうしようもない虚無。
暗い渦に支配された感情を抑えながら、ようやく絞り出した返事。
守助は目を細め、もう一度私の頬にくちびるを寄せた。
「愛してるんですよ……このままずっと、閉じ込めていたいほど」