国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
「で、殿下……素手で触らない方が……実験用ですから」

ヤンが慌ててマーティスに駆け寄って、彼の腕を掴む。

「良いじゃないか。減るもんじゃないし。なあ?」
「ふふっ……大丈夫ですよ。素手で触っても効果に変化はないと分かっていますから。……それより」

ニーナはヤンに視線を送る。

「ヤンさん、もう素を出して構いませんよ。私がいるから、そのオドオドとしたキャラを続けているのでしょう? 無理なさらないでくださいね」

ニーナの言葉にヤンは目を丸くしていた。
その隣でマーティスが盛大に吹き出す。

「はははっ! ニーナちゃん良いねぇ。ほらヤン、許可が下りたぞ。もとに戻れよ」

ヤンはマーティスを掴んでいた手を離し、マーティスを睨みつける。

「どうせ殿下が『ヤンから評価を聞いたよー』だのと入れ知恵したのでしょう? ……ニーナ様、騙すような形になって申し訳ありませんでした」

ヤンは深く丁寧なお辞儀をした。
オドオドした雰囲気が一瞬で消え失せ、いかにも頭の切れそうな男性が目の前にいた。

ニーナも丁寧に礼を返す。

「私は底知れぬ女なのでしょう? そんなことありませんから、これからよく知ってくださいな」
「寛大なお心に感謝します。ほら殿下、用が済んだら帰りますよ。まだお仕事が終わっていませんので」

ヤンはマーティスの背中を無遠慮にグイグイと押した。



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