国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
狂ったような目つきでこちらを見てくるアレクサンドロスに、ニーナは思わず身をすくめた。

「で、殿下……落ち着いてください。発言はよく考えてからなさってください。ご自身が一番良く分かっているでしょう? なぜ殿下が私を追放したのか思い出してください!」
「お、俺は……違うっ! マリアも大司教も……皆が俺を騙したんだ! 俺はただ……俺は……」

アレクサンドロスは何かを言おうとして、ずっと言葉を探している。
とても一国の王子には見えない。

皇帝はからかうようにアレクサンドロスを一瞥した。

「あぁ、新しい聖女を据えたのはお前だったな。どんな気分だ?」
「黙れっ! 俺はただ……マリアと結婚して幸せになるためにっ! 仕方なくやったんだ! 森の瘴気だけのはずだったんだ……。そうすればニーナ・バイエルンを取り戻して……」
「なんと情けない言い訳だ。先代聖女が他国で成果を上げている時、自分が用意した聖女は治癒ひとつ出来ない。瘴気も浄化出来ず、再び先代聖女に頼るなど……愚かにもほどがある」
「マリアが聖女になれなかったのは俺のせいじゃないっ! ……クソっ!!」
「話にならんな。今日はお前の愚痴を聞くために集まったわけではない。まともに話せるのは、そこの大司教だけのようだ。さて、そこの王子は我が国へ瘴気を広めたと自白したわけだが、これは宣戦布告か?」

皇帝の鋭い視線がアレクサンドロスに注がれる。



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