国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
お酒のおかげで話も弾み、ニーナはずっと笑いながらフェルディナンドとの食事を楽しんだ。

「ニーナは生活能力に長けているね。聖女というと上級貴族のような立場を想像するけど、ニーナはそれとは違うね」
「ふふふっ、そうでしょ? 私も聖女って優雅な生活が出来るのだと思っていたわ。でも実際は、各地を回る旅人のような生活だったの。だから、簡単な家事が身に着いたのよ。一人で生活するしかないものね」

そう言った瞬間、フェルディナンドの表情が曇った。

「ルティシアにおいて、聖女というのは最も尊ばれる立場なはずだ。それなのに……」
「あ、えっと、気にしないで! 全然良いのよ。お偉い立場なんてガラじゃないし、堅苦しいのは嫌いだったから。私にとっては気楽な生活だったわ」

ニーナはつとめて明るい声を出したが、どんどんとフェルディナンドの顔が暗くなっていく。

そしてしばらく沈黙をした後、何かを決意したかのように口を開いた。

「ニーナは、ルティシアのことをどう見ていた?」
「どうって?」

ニーナが首を傾げていると、フェルディナンドが真剣な表情で付け足した。

「国としての価値が如何ほどか、っていう話」
「国の、価値……」

今度はニーナが沈黙する番だった。

(ルティシアの価値……それはどんな基準で考えたら良いのかしら?)

お酒でふわふわする頭を必死に捻るが、ピンとくる答えは浮かんでこない。


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