俺の妻に手を出すな~離婚前提なのに、御曹司の独占愛が爆発して~
ほんの十秒程度の短い時間。

まるで世界にはふたりしかいないような錯覚を覚えながら、ただ見つめ合っていた。

そして、この時間が永遠に続けばいいのにと心の中で繰り返している自分に気づき、里穂は胸の奥に鈍い痛みを感じていた。

その痛みの正体はなんなのか、今もわからないままだ。

「あれが俺と恭太郞が通っていた小学校。奥に中等部があって、高等部はその向こう」

「えっ」

蒼真の声に、思いを巡らせていた里穂は我に返る。

顔を向けると、蒼真が苦笑し里穂を見つめている。

「疲れてる?」

「いえ、大丈夫です。ちょっとぼんやりしていただけで」 

里穂は胸の前で手を横に振る。

不意に端整な顔が目の前に現れて、蒼真のことを考えていた心を見透かされたようでドキドキしている。

「大学は学部によって結構バラバラなんだよな」

目の前の大通りを挟んで向こう側に見えるレンガ造りの立派な建物を眺めながら、蒼真が説明を続けている。

それは国内屈指の名門大学の附属小学校で、蒼真と恭太郞の母校でもある。

「俺が薬学部に進むことにした時、当たり前のように恭太郞も薬学部に決めたんだ。あの時だけは自分の人生を真面目に考えろって説教した」

「恭太郞君らしいですね。蒼真さんのことが大好きだから」

蒼真はうんざりするように顔をしかめた。

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