俺の妻に手を出すな~離婚前提なのに、御曹司の独占愛が爆発して~
よほど興奮しているのか目はつり上がり真っ赤な顔でわなわな震えている。

「お金なんて」
 
想像していた以上の利己的な言葉や振る舞いに不安が消え、それに代わって湧き上がる苛立ちに、唇をかみしめた。

「それにしても、蒼真も女を見る目がないな。どうせならうちの会社の役に立ちそうな女と結婚すればいいものを。だから世間知らずの坊ちゃんはダメなんだよ。で、いくら欲しいんだ? 蒼真と今すぐ別れるならいずれ杏華堂の社長になる俺がくれてやる」

「私はお金のために蒼真さんと結婚したわけじゃありません」

里穂は勢いよく立ち上がり、きっぱりと言い放った。

蒼真の立場を考えればここはおとなしく聞き流すべきだとわかっているが、自分のことなら我慢できても蒼真のことを悪く言われるのは我慢できなかった。

「私は蒼真さんを、あ、愛しているから結婚したんです。お金が欲しくて結婚したんじゃありません」

貫禄がある大きな身体に気おされながらも、里穂は相手をまっすぐ見据えて言葉を続けた。

愛しているとは自分でもよく言えたと思うが、これくらい言わなければ蒼真との結婚が契約結婚だと見抜かれてしまうような気がしたのだ。

「それに、蒼真さんは世間知らずの坊ちゃんじゃありません」

〝自分の力を過信せずに、謙虚に仕事に向き合え〟

その言葉を戒めにして真摯に仕事に向き合う蒼真のことを、バカにしないでほしい。

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