俺の妻に手を出すな~離婚前提なのに、御曹司の独占愛が爆発して~
改装前最後の営業日の今日、常連さんが大挙して来てくれたが、いつもよりも早く暖簾をしまった今、店には雫以外誰もいない。

「今日は大勢来てくれた?」

少し声を詰まらせながら、雫が店の中を見回している。

店内はやけに静かだ。

「うん、店に入れないくらい来てくれて、ちょっと泣きそうになった」

今日は常連さんたちが次々顔を出してくれて、最後の夜を明るく盛り上げてくれた。

改装が終わればまた営業を始めるが、父が大切につくりあげた食堂は今日でいったん終了だ。

明日からは業者が入り、改装の準備が始まる予定だ。

店の中からすべての物が運び出され、改装まで蒼真が用意してくれた倉庫で保管されるそうだ。

「いよいよか……」

雫も寂しいのか目を潤ませている。

「そういえば、恭太郞もしばらく皿洗いができないのが寂しいって的外れなこと言ってたな。いつもどこかずれてるのよね」

しんみりとなりかけた空気を変えるように雫が明るい声をあげる。

思い出がつまった店に手を加えるのは寂しいが、それは仕方がない。

代わりに手に入る安全と使いやすさを楽しみにしながら、完成を待つつもりだ。

「でも、ちょっとびっくりしてるんだよね」

雫がカウンターの中にやって来て普段通りエプロンを身につける。最後の夜、じっとしていられないようだ。

< 146 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop