he said , she said[完結編]
信号が青に変わり足を踏み出す。
瞳子が顔をこちらに向け、直弥と視線がかち合った。
かるく手を上げてみせると、彼女も小さく手を振った。

交差点を大股で渡り、お待たせしました、と笑いかけると「今日はよろしくお願いします」と瞳子がちょこんとあごを下げる仕草をしてみせた。
会社では肩までの髪をストレートに下ろしているが、今日は内巻きにセットしている。
平日とは違うおしゃれを意識しているということだ。

仕事を離れてプライベートで会うのは、互いに面はゆいものだ。
しかも二人のあいだにはまだ何も始まっていない。

「ちょっと早いけど、お店行きましょうか」
ランチを食べてから絵画展に行く段取りだった。さて初デートのエスコートは腕の見せ所だ。

外苑東通りを二人で歩き、ミッドタウンを右手に見ながら路地に入ってゆく。
とたんに道幅はぐっと狭く建物は小ぶりになる。飲食店がひしめいているが、バーが多く昼の時間帯は扉を閉ざしている店が目についた。
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