エリートなあなた


泣いていると悟られないよう、俯き加減に小走りで賑わう店の出入り口を目指す。



お店の暖簾をくぐる際、カウンターから「ありがとうございました」と背中へ届いた声。



それがふと悲しさを呼び寄せて、泣きたい気分を助長するから重症だろう。



大通りから差し込む薄明りを頼りに、店の外の細い路地裏はひっそり静まっていた。



来た道を辿って返るために重い足を一歩ずつ前へ進めると、ヒール音が小さく鳴る。



いつもは電車で帰宅するのに、やっぱりそんな気になれなくてタクシーを選んだ。



区内にある自宅までなら、この場所からタクシーを使っても距離は知れている。



とりあえず大通りへ出て捕まえよう、…そう思いながら歩いていた時だった。



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