エリートなあなた
「今は真帆しか考えられない、ただの男――ってコト!
俺の名前忘れた、とは言わせないよ…?ほら、呼んでよ」
「…あ、し、しゅうへ、い」
しどろもどろの私に口元を緩ませながら、「聞こえないー」とイジワルな声で言う。
どこか拗ねたその表情をかわいい、と言ったらきっと怒るかな?
そう思ってクスクス笑っていると、唇にそっと彼の親指の腹が触れる。
「まだ乾いてない、」
「っ、」
いきなり妖しさの孕む顔で言うから、途端に強張った私の唇を拭っていく。
「――で、俺の名前は?」
「し、しゅうへ、いさん、」
「“さん”は要らないのに」
「…これは、譲りません」
唇からようやく離れた指先に安堵した私の発言に、今度は楽しそうに笑い始めた。