エリートなあなた
さらにハートバイオ社の近くにある居酒屋だと伝えて、了承した修平さんの電話が切れた。
慌てて店内へ戻ると視界の先には、何やら難しい顔をして携帯を見ていた剛史が。
「ごめん!どうかしたの?」と矢継ぎ早に尋ねれば、はああと途端に深い溜め息を吐き出した。
「なあ、…いま彼氏は?」
「…あ、うん、」
「俺の知ってる人?」
あまり深く潜入されると困るため、言葉少なく「ううん、」と頭を振ってしまう。
すると携帯電話をスーツのポケットにおさめて、テーブル上で頬杖をついた剛史。
「あー、…なんかさ?相手を思うと難しいなぁ。
――俺が好きな子って、他の男に良いように扱われてんの。…それも辰見課長!」
「…え?」
酒に酔ってきたのか、少し顔が赤くなっている彼が自嘲笑いを浮かべながら言う。
「半年くらい前にたまたま、その子が社内で泣いてるとこ目撃しちゃってさ…。
彼女の方は本気なんだけど、あの課長って手クセ悪いんだよ。…あ、ここだけの話な?
――しつこくアタックかけて落とすと、あとは飽きるまで弄ぶだけ。…彼女にしたってセフレの1人にしか考えてない。
俺、課長と同じ職場だろ?…だからその子に頼りにされちゃって、…何度も話聞いてたんだよ」
「…剛史、」
辰見課長の素行の悪さは自分で体験済みだから、…剛史とその女性の話が他人事には聞こえない。