エリートなあなた


きっとアルコールが入っていたせいもあるのだろう。電話越しに何度も言ったフレーズは、心に巣食っていた本心の吐露だから。



「――今どこ?」


「…え、」


「迎えに行くから」


泣きそうなわたしの耳に届く声の優しさ。それを受け入れて良いのか、躊躇ってしまう。


「…し、ごとは?」


ここ最近の彼は眠っているのか心配になるほど、あまり顔色が良くなかった。



それくらい忙しい人がこの時間帯に帰れるわけがない――部下だから余計に分かる。



「――ああ、WEB会議が本社側の都合で急遽中止になったんだよ。

何もすることない俺は、ぜひ迎えに行かせて貰えると嬉しいんだけどなぁ?」


私が遠慮するのを分かっていて、“うん”と言えるキッカケをくれる優しい彼。



「お、…お願いします、」


「もちろん」


その途端に弾んだ声音を聞かせてくれるのなら、…今日だけはわがままを許して欲しい。



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