エリートなあなた
「だって修平さん、…運転して疲れてるのに私――」
そこで止めると、反応を探るようにダークグレイの瞳を横目で見てしまう。
今日、来てから振り返ると自分のコトしか考えてないと気づいてしまって。
さんざん連れ回した挙句、喉が渇いていないかの気遣いすら出来ないとは…。
「まったく、」
するとククッと、喉を鳴らすような笑い声が左方から聞こえた。チラリと一瞥してみれば、いつもの優しい顔がそこにあった。
「いいか?真帆の言うような気遣いも大切だと思うが、相手ばかりを気にした付き合いも疲れるだけだ。
――まあ、そのバランスが取れてたから、俺たちは上手くいったと思うけどな…?
大体、俺はヤワとは無縁だから気に病む必要ないよ。いわば元気が取り柄だし?
まして真帆が笑ってないと折角のデートも台無しなんですけどー…」
どうしてここまで分かるのと聞きたいほど、本当に人の心が透けた分かる人だ。
「本当だね、もう気にしない様にする」
「そうそう、真帆ちゃんは気にしすぎ!」
優しいダークグレイの瞳からは、反省の言葉は呑み込むのが正しいと分かって頷いた。
「うんっ!」
その代わりに彼が求めてくれる――心からの笑顔を浮かべることにした。