エリートなあなた


様々な経験は重ねてきていても、感情うんぬんは何もかもが初めてで戸惑う。



こういった悩みは瑞穂のアドバイスを聞いても、今後もさらに尽きないと思う。



ただ根拠はないけれど――きっと彼となら、乗り越えられそうに感じるの。



すると耳元へ修平さんの顔が近づき、


「…真帆を抱いてスッキリしてるもん」


「もぉ…っ」


低音ボイスで囁かれた不意打ちに顔を赤らめてしまった。――こんな場所でもイジワルなんて。



「ハハッ――これ飲んでショー見るぞ」


「つめたっ!」


まだ赤みの残る私の顔へ、ペットボトルのジュースをくっつけてくるお茶目なところもあるし。



経験や考えも何もかもが未知数で、エリートな彼の行動は想像出来ない。…だからこそ、惹かれてしまう。



「あ、真帆ちゃん。何なら、前列でイルカに水ぶっかけて貰う?」



「知らないっ」と言い合いながら、互いに自分のペットボトルを開けて喉を潤した。



ジュースを片手に、最高潮に盛り上がるイルカショーが放つ水飛沫の輝きからもう目が離せない。



――世界で最も私の笑顔を引き出せる人は、心のモヤモヤすらあっさり払拭してくれた。



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