エリートなあなた


地方都市である名古屋の街中に、これほど広大で緑を感じられる場所があるとはすごい。



ちなみにここでは結婚式が行なわれたり、普段からも多くの参拝客が訪れると事前に教えてくれた彼。



水族館とは違った頬を撫でるような優しくも冷たい風が吹き、繋いだ手とその隙間にまで滑り込んでくる。



神社やお寺を訪れると、それだけで身も心も研ぎ澄まされる感覚になるから不思議だ。



一歩一歩近づく建物の歴史ゆえだろうけれど、…それだけじゃない。



隣を歩く修平さんのせいだ――難しい顔つきでずっと、正面をジッと見据えているのだ。



――この時の彼の表情だけで何かを気づけるほど、やっぱり私は大人じゃなかったね。



繋がれた手が離れることのないよう、…コドモな私はそれで精一杯だったから。



< 315 / 367 >

この作品をシェア

pagetop