エリートなあなた


仕事モードで告げると視線を外し、ハンドルへ重心を置いて前方を再び見据えてしまった。



微かに流れるBGMだけが響く車内は、たちまち重い空気に見舞われる。



皮肉なことに、どこか心境を綴ったような切ないラブソングだった。



「ほ、本社…って?」


ただ一言が上手く呑めずにいた私は、気づけばオウム返しで尋ねていた。



「ああ、…前から出されていた“条件”が揃ったからね」


「ど、ういう?」


真っ直ぐ遠くを見つめている彼の横顔に、一瞬の陰りが見えたのは気のせい…?



「――俺がマネジメント課で働いていたことは知ってるよな?」


「…はい、」


確認される声色や口調が明らかに、仕事の話のせいか冷たくて心まで寒い。



だからごくごく自然と、上司と会話するための敬語に切り変わっていた。



< 324 / 367 >

この作品をシェア

pagetop