エリートなあなた
仕事モードで告げると視線を外し、ハンドルへ重心を置いて前方を再び見据えてしまった。
微かに流れるBGMだけが響く車内は、たちまち重い空気に見舞われる。
皮肉なことに、どこか心境を綴ったような切ないラブソングだった。
「ほ、本社…って?」
ただ一言が上手く呑めずにいた私は、気づけばオウム返しで尋ねていた。
「ああ、…前から出されていた“条件”が揃ったからね」
「ど、ういう?」
真っ直ぐ遠くを見つめている彼の横顔に、一瞬の陰りが見えたのは気のせい…?
「――俺がマネジメント課で働いていたことは知ってるよな?」
「…はい、」
確認される声色や口調が明らかに、仕事の話のせいか冷たくて心まで寒い。
だからごくごく自然と、上司と会話するための敬語に切り変わっていた。