エリートなあなた
対峙する私と阿野さんを囲みながら、一層騒がしさを増す辺り。私の背後では、幾つものエレベーターの扉が開閉していた。
「どうせアナタのことだもの。専務にでも取り入ったんでしょ!?
聞いたわよ私!アンタが大学時代、とっかえひっかえしてた男好きだって…!」
「ッ、…な、にそれ」
放たれたフレーズに言葉を失う。確かに大学時代は、何人かの男性と付き合っていた。
けれどなぜ、そんなことを彼女が今ここで言うの…?
「最低よアンタ!男好きは結局、身体を利用してのし上がるんでしょ!?」
さらにざわつく周囲と、吠えるように叫ぶ声が耳をつんざく。幾つもの視線が私に突き刺さり、身体からは体温が奪われていく。
「アンタが秘書課に入らなきゃ、…私が入れたかもしれないのに!」
語尾に力を込めた阿野さんの強い目は、まだ入社時のことを恨んでいるのだと分かった。