早河シリーズ第三幕【堕天使】
先に車を降りたスコーピオンが後部座席の扉を開ける。キングに手を引かれて車を降りた莉央は路地の一角に建つ二階建ての建物を見上げた。
ドイツ建築を彷彿とさせるハーフティンバー様式の建物の看板には〈珈琲館 Eden〉の文字。
「カフェですか?」
『そうだよ。スコーピオンが経営しているんだ。彼はコーヒーを淹れる腕が一流なんだよ』
当のスコーピオンはトランクから出した莉央のキャリーバックを持って彼らの一歩後ろを歩いている。
莉央が自分でキャリーバックを運ぼうとしたのだがスコーピオンにあっさり断られてしまった。
closeの札がかかる焦げ茶色の扉は、莉央の予想に反して鍵が開いていた。キングに招かれて莉央は店内に入る。
木目調のテーブルが並ぶ店内に眼鏡をかけた若い男がひとりで座っていた。
『キング。こんな時間にここに来るのは珍しいですね』
『こちらのお嬢さんをどこにお連れすればいいかわからなくてね』
眼鏡の男はキングの隣の莉央を見て苦笑いする。
『ああ、とうとう拾ってきてしまいました?』
『どうだろうね。拾われるかは彼女が決めることだ。莉央、ここに座りなさい』
キングが引いた椅子に莉央は腰掛けた。向かいの椅子にキングが掛け、キングの向こうに眼鏡の男がいる。
眼鏡の男の前にはノートパソコンがあった。
スコーピオンと呼ばれた男はいつの間にかエプロンをつけてカウンターの奥で作業をしていた。莉央のキャリーバックはカウンターの隅に置かれている。
『彼の名前はスパイダー。彼にもスコーピオンと同じく私の仕事を手伝ってもらっているよ』
スパイダーと紹介された眼鏡の男はパソコンから視線を上げて莉央に会釈した。彼も最初こそ莉央を見て苦笑いを浮かべていたが、その他の表情の変化は読めない。無表情で冷めた印象だった。
「キングはどんなお仕事をされているのですか?」
『投資や経営と手広くやっているよ』
「社長さん……なんですか?」
莉央の問いに吹き出したのはそれまで無表情を貫いていたスパイダーだった。パソコンのキーボードを打ちながらスパイダーは笑いを堪えている。
『キングが社長には間違いないですよね。社長というよりは会長に近い。ある意味で僕達は会社組織のようなものですから』
『確かに我々もひとつの企業かもしれないね』
スパイダーとキングの含みを持たせた発言が気になる。
莉央はこの不思議な三人の男を順に見た。
キングの名の通り、目の前にいるこの男が彼らのトップなのだろう。
キングの年齢はまだ若い。二十代前半に見える。
中年の男のスコーピオンは運転手を務めていた。そしてカフェの経営者でもある。
キングと同年代に見えたスパイダーは人と話をする時もパソコンから目を離さない。
ドイツ建築を彷彿とさせるハーフティンバー様式の建物の看板には〈珈琲館 Eden〉の文字。
「カフェですか?」
『そうだよ。スコーピオンが経営しているんだ。彼はコーヒーを淹れる腕が一流なんだよ』
当のスコーピオンはトランクから出した莉央のキャリーバックを持って彼らの一歩後ろを歩いている。
莉央が自分でキャリーバックを運ぼうとしたのだがスコーピオンにあっさり断られてしまった。
closeの札がかかる焦げ茶色の扉は、莉央の予想に反して鍵が開いていた。キングに招かれて莉央は店内に入る。
木目調のテーブルが並ぶ店内に眼鏡をかけた若い男がひとりで座っていた。
『キング。こんな時間にここに来るのは珍しいですね』
『こちらのお嬢さんをどこにお連れすればいいかわからなくてね』
眼鏡の男はキングの隣の莉央を見て苦笑いする。
『ああ、とうとう拾ってきてしまいました?』
『どうだろうね。拾われるかは彼女が決めることだ。莉央、ここに座りなさい』
キングが引いた椅子に莉央は腰掛けた。向かいの椅子にキングが掛け、キングの向こうに眼鏡の男がいる。
眼鏡の男の前にはノートパソコンがあった。
スコーピオンと呼ばれた男はいつの間にかエプロンをつけてカウンターの奥で作業をしていた。莉央のキャリーバックはカウンターの隅に置かれている。
『彼の名前はスパイダー。彼にもスコーピオンと同じく私の仕事を手伝ってもらっているよ』
スパイダーと紹介された眼鏡の男はパソコンから視線を上げて莉央に会釈した。彼も最初こそ莉央を見て苦笑いを浮かべていたが、その他の表情の変化は読めない。無表情で冷めた印象だった。
「キングはどんなお仕事をされているのですか?」
『投資や経営と手広くやっているよ』
「社長さん……なんですか?」
莉央の問いに吹き出したのはそれまで無表情を貫いていたスパイダーだった。パソコンのキーボードを打ちながらスパイダーは笑いを堪えている。
『キングが社長には間違いないですよね。社長というよりは会長に近い。ある意味で僕達は会社組織のようなものですから』
『確かに我々もひとつの企業かもしれないね』
スパイダーとキングの含みを持たせた発言が気になる。
莉央はこの不思議な三人の男を順に見た。
キングの名の通り、目の前にいるこの男が彼らのトップなのだろう。
キングの年齢はまだ若い。二十代前半に見える。
中年の男のスコーピオンは運転手を務めていた。そしてカフェの経営者でもある。
キングと同年代に見えたスパイダーは人と話をする時もパソコンから目を離さない。