無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚～甘く豹変した旦那様に捕まりました～【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】

『主人がご迷惑をおかけして申し訳ないわ。でもお見合い当日だっていうのに娘が帰ってこなくて困ってるのよ。由惟さん、娘の代わりにお見合いに出てくださらないかしら？』

　まったく申し訳ないとは思っていなさそうな悠然とした態度で、みどりはとんでもないことを口にした。呆気に取られ、由惟は返す言葉が見つからない。
　みどりの隣では、寛二が土下座せんばかりの勢いで机に頭を擦り付けている。

　カオスすぎる状況の中、詳しく話を聞くと、彼らの娘の穂乃花は奔放な性格で、元々見合い話に嫌悪を示していたらしい。両親が「見合いがあるから地元に帰って来い」と再三連絡しても無視を貫いた上に、「やっと私の運命の人を見つけたから、もう帰らない」と一方的に宣言してしまって行方をくらましたのだとか。要するにかけ落ちしたらしい。

　見合い当日の今日まで興信所を使って全国を探し回っていたようだが、結局見つからなかったとのこと。

『お見合いを中止にできないんですか？』
『いやいやいや。中止なんて滅相もない。このお見合いは絶対成立させなきゃいけないんだよ。でないとうちの病院の存続に関わる』
『お見合い相手の成澤くんは、日本の若手脳神経外科医の中でも十指に入る実力の持ち主なの。地元の縁でうちの病院に来てくれたんだけど、雑誌やテレビでも特集されてるから彼の集客力がすごくてね。彼のおかげでうちの病院は経営を盛り返すことができたのよ』
『そう！こんな地方の病院に彼がいてくれることがもう奇跡なんだよ！彼以外、うちの病院の後継ぎは考えられない！だからこのお見合いは絶対に失敗できないんだ！お願いだよ、由惟さん！この通りだ！穂乃花の代わりをしてくれないか！』

　机にめり込みそうなほど頭を下げる寛二の懇願は、そう簡単には忘れられないほど強烈だった。

　結果として由惟は、お見合いの身代わりという非常識な提案を受け入れた。
　だが、それは決して寛二の必死の説得に絆されたからではない。