無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚~甘く豹変した旦那様に捕まりました~【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】
「なんだ?ちょっと放っておかれたくらいで、親に泣きつきに行くのか?」
「そうじゃなくて。成澤さんがこの二週間帰らなかったのは私がいたからなんでしょう?みど……いえ、母から聞きました。ずっと病院の仮眠室に泊まってたって。そんな生活を続けてたら体を壊しちゃうじゃないですか。だから、私が出て行きます。成澤さんは普通におうちに帰ってきてください」
「俺のためだって?随分と親切なんだな」
「私のせいで倒れられたら寝覚めが悪いからですよ!」

 ムッとして、つい語気が荒くなってしまった。
 あ、と思った時には、真紘は面を食らった表情をしていて――次の瞬間には思いっきり破顔していた。膨らんだ桔梗の蕾が弾け咲くように唐突だった。

「寝覚めね。おまえ、なかなかいい性格してるな」

 肩を揺らして笑い続ける真紘に、由惟は戸惑いを隠せない。
 
「……私がこんな態度を取るのは成澤さんにだけです」
「ハハッ」

 何が面白いんだろう。こっちは面白くもなんともないのに。
 白けた視線を送っていると、ようやく笑いが収まったらしい真紘が乱れた呼吸を整えるように一つ息を吐いた。

「別に出て行かなくていい。おまえが出て行ったら本末転倒だろ。それに俺が帰らなかったのは、おまえの人となりを見極めたかっただけだ」
 
「……一緒に過ごさなきゃ、人となりなんてわからないと思いますけど」
「俺といる時はずっと猫を被ってるかもしれないだろ。人間、一人の時に本性が出るからな」
「それをどうやって知るんです?まさか監視カメラとか?」

 ゾワッと鳥肌が立って、思わず左右を見回していると、額を指で弾かれた。いたずらっぽく笑った真紘が指を構えている。

「バーカ。そんなわけないだろ」

 ニッと歯を見せる真紘の笑顔に、一瞬呼吸を忘れた。どうしてだろう。異常なほど胸が高鳴っている。
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