無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚~甘く豹変した旦那様に捕まりました~【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】
 温め終えたご飯を並べ終えてテーブルにつくと、いつもとは違う景色になんだかソワソワした。この家で真紘と食卓を囲むのは初めてだ。体の奥にある心臓がむず痒さを訴えている。

 落ち着かない気持ちを紛らわすように「いただきます」と手を合わせた。さっさと食べてしまおうと箸を持ったところで、なぜか「おい」と待ったをかけられる。

「なんですか?」
「おまえの分の鶏肉がないだろ」
「私の分はなくて大丈夫です」

 節約のため、自分の主菜を用意する習慣がなかったから、そもそも鶏の照り焼きは一人分しか用意していない。由惟にとってはこれが普通だ。真紘が気にする必要はないのだが。
 
「はぁ?」

 いきなりドスの効いた声で凄まれ、由惟はビクリと肩を揺らした。

「なんで?ダイエットでもしてるのか?」
「いや、あー、えっと、まあ……はい。そんな感じです」

 いつも食べていなかったと白状するのは、さすがに惨めったらしくて嫌だ。適当に濁すと、真紘の眉間の皺がさらに深くなった。

「それ以上痩せたら骨と皮だけになるぞ。馬鹿なことするな」

 真紘が照り焼きの乗った皿をこちらにスライドさせてくる。

「いえ。私のことは気にしていただかなくて大丈夫です。成澤さんが食べてください」

 由惟はお皿を真紘の方へそっと戻した。が、真紘がまたぐいっと押し返してくるので埒があかない。
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