無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚~甘く豹変した旦那様に捕まりました~【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】
 小鉢に用意していた小松菜と湯葉のおひたしと豚しゃぶサラダ、それになめこの味噌汁もあっという間に空にすると、真紘は重ねた器を持って席を立った。

「ごちそうさま。うまかった」
「いえ、お粗末さまでした」

 自分の食器をさっさと食洗機に入れ、真紘は由惟を振り返ることもなく部屋へ引き上げていった。

 席に座ってから立つまで、わずか十五分足らず。話を投げかけるのは決まって由惟で、会話が盛り上がることはない。決まった道筋で返ってくる球をひたすら打ち返すテニスの壁打ち練習のよう。苦痛ではないけれど、時折虚しさに駆られる。

 真紘は由惟に対して徹底した無関心を貫いていた。由惟を傷つけようとかそういう悪意は感じない。ただただ興味がないだけ。
 
 好感度マイナスからゼロになったのは、はたして進展したと言ってもいいんだろうか。嫌悪といえど、真紘から向けられていた感情が無になったという点ではむしろ後退した気もする。

 九号の短いメリケン針でチクリと刺されたようにほんの少しだけ胸が痛んだ。
 
 ひょっとして自分は傷ついているんだろうか?真紘から関心をもたれず、いてもいなくても構わない使用人程度にしか思われていないことに。
 でも、どうして?横井家では今よりずっとひどい扱いを受けていた。今更こんな些細なことで傷つくなんてありえないはずなのに。

 いくら分析してもその答えは出てくれなくて。由惟は白米と一緒にそのモヤモヤを飲み下すしかなかった。
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