無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚~甘く豹変した旦那様に捕まりました~【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】
「…………は?初めて?それ、どういう意味だ?」
「ど、どういう意味って……」

(そのままの意味ですけど)

 皆まで言わずとも意味を理解してくれたようで、真紘はバツが悪そうにスっと目を逸らした。
 
 手首も解放され、健全な男女の距離に戻ると、リビングにはこの上なく気まずい沈黙が落ちる。

「……………………それ、おまえが作ったのか」

 妙にソワソワした静寂を破ったのは真紘だった。視線の先には縫いかけのミカちゃん人形の服がある。

(あ……)

 急いで手を伸ばして、真紘の視界から服を隠そうとするも、間に合わなかった。真紘は小さな服を手に取ってしげしげと眺めている。

「あの、ごめんなさい……ちょっと時間が余っちゃって……」
「すごいな。これ、一から自分で作ってるのか?」
「えっ?あ、はい」
「器用だな」

 思っていた反応と全く違って、由惟は目を瞠った。てっきり、人が仕事をしている間に遊んでいるなんて、と目くじらを立てられると思っていたので。

「な、成澤さんもできると思いますよ。外科医さんですし。毎日いろいろ縫ってるんじゃありません?」
「血管縫うのと裁縫は全然違うぞ。そもそも針の形からして違う」

 呆れたように笑う真紘は、由惟の縫ったスカートを細部にわたって隅々まで眺めている。なんだか自分自身も暴かれているようで恥ずかしい。

「服装とかには興味ないんだと思っていたけど、こういうのは好きなんだな」

 意外そうな目線をこちらに投げられ、由惟は苦笑した。
 彼の言いたいことはわかる。自分自身は洒落っ気ゼロのTシャツとパンツを着ているくせに、縫っているのはフリルテープを貼り付けたロングスカートだ。チグハグすぎて自分でもおかしいなと思う。
 
 でも好きな服を選べる環境になかったのだ。せめてミカちゃんにはと、自分が好きな可愛い服を着てもらっている。
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