無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚~甘く豹変した旦那様に捕まりました~【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】
病院へトンボ帰りした真紘が自宅に帰ってきたのは、翌日の夜だった。
玄関へ出迎えにいくと、革靴をダルそうに脱ぐ真紘のつむじが見えた。
「おかえりなさい、お疲れ様です」
だが返事はなく、真紘は俯きがちに由惟の横を通り抜けていった。
「成澤さん?」
「悪い。今日はもう休む」
追いかけた由惟の鼻先で、バタンと音を立てて扉が閉まった。
目も合わなかった。明らかに拒絶されたのだとわかる。
彼の世界から切り離されてしまったようで、一瞬途方に暮れた。最近は徐々に距離が縮んでいたと思っていただけに、この反応はショックだった。
もしかして何かあったんだろうか。
そう考えたところで、昨夜真紘が慌ただしく出て行ったことを思い出す。点と点が繋がった気がした。
物音ひとつ立てない向こうの空間に寄り添うように、由惟は扉に手を添えた。
――患者さんの死の瞬間に立ち会うのは、やはり何年経っても慣れませんね。鉛のように重たい物が胸に落ちて、やるせない気持ちになります。
不意に頭をよぎったのは、高校二年生の頃に出席した進路講演会に登壇していたOBの言葉だった。医者として働く彼は、担当患者が亡くなった時はどんな気持ちになるかと生徒から問われて、そう答えていた。
もしかしたら、真紘も今、同じような気持ちを抱いているのかもしれない。でもなんと声をかければいいのだろう。
もし由惟が本当の婚約者だったのなら、彼の心の隙間を埋めることができたのかもしれない。部外者の由惟がなにか言葉をかけたところで、所詮空虚な意味しか持たないことは明白だった。
なにもできない自分が無性に口惜しい。
玄関へ出迎えにいくと、革靴をダルそうに脱ぐ真紘のつむじが見えた。
「おかえりなさい、お疲れ様です」
だが返事はなく、真紘は俯きがちに由惟の横を通り抜けていった。
「成澤さん?」
「悪い。今日はもう休む」
追いかけた由惟の鼻先で、バタンと音を立てて扉が閉まった。
目も合わなかった。明らかに拒絶されたのだとわかる。
彼の世界から切り離されてしまったようで、一瞬途方に暮れた。最近は徐々に距離が縮んでいたと思っていただけに、この反応はショックだった。
もしかして何かあったんだろうか。
そう考えたところで、昨夜真紘が慌ただしく出て行ったことを思い出す。点と点が繋がった気がした。
物音ひとつ立てない向こうの空間に寄り添うように、由惟は扉に手を添えた。
――患者さんの死の瞬間に立ち会うのは、やはり何年経っても慣れませんね。鉛のように重たい物が胸に落ちて、やるせない気持ちになります。
不意に頭をよぎったのは、高校二年生の頃に出席した進路講演会に登壇していたOBの言葉だった。医者として働く彼は、担当患者が亡くなった時はどんな気持ちになるかと生徒から問われて、そう答えていた。
もしかしたら、真紘も今、同じような気持ちを抱いているのかもしれない。でもなんと声をかければいいのだろう。
もし由惟が本当の婚約者だったのなら、彼の心の隙間を埋めることができたのかもしれない。部外者の由惟がなにか言葉をかけたところで、所詮空虚な意味しか持たないことは明白だった。
なにもできない自分が無性に口惜しい。