無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚~甘く豹変した旦那様に捕まりました~【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】
 真紘が懇々と自分に言い聞かせていると、ぼんやりしていた穂乃花がようやくその口を開いた。

「……ごめんなさい。なんか、まともに名前を呼ばれたのが初めてだったから、驚いちゃって……」
「…………」

 名前を呼んだことがないなんて、人としてどうなのか。だが、穂乃花の目が泳ぎまくっているので事実なんだろう。
 気まずさは咳払いで吹き飛ばすことにした。

「で、穂乃花はどこに行ってたんだ?」
「えぇっと……母が偶然時間が空いたと言っていたので、外で少し話をしていて」
「……みどりさんか」

 がくっと拍子抜けした。母子の邂逅に事件性などまるでない。

「ごめんなさい。成澤さんがこんなに早く帰ってくると思わなくて……ご飯、帰ったらすぐ温めますね」
「もうやってる」
「えっ?!す、すみません!」

 目を丸くして謝り出す穂乃花に少しムッとする。確かに仕事にかまけて家事は穂乃花に任せきりだが、自分はどれだけ何もできないと思われてるんだろうか。

「言っとくが、アメリカにいた時は自分の飯くらい自分で用意してた。それくらい俺でもできる」
「そっか。すみません、ありがとうございます」

 へにゃりと気の抜けた笑みを見せる穂乃花に、強張っていた己の表情が意思に反して緩んでしまう。
 いや、これは過剰に謝る穂乃花に呆れただけだ。決して可愛いとか、そんな風に思ったわけじゃない。
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