無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚~甘く豹変した旦那様に捕まりました~【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】
「ほら、帰るぞ」
「えっ?でも成澤さん、今どこかに出かけようとしてませんでした?」

 穂乃花が余計なことを言ってくる。思わずその口を塞いでやりたくなった。

「いいからさっさと行くぞ」

 もたもたしている穂乃花の手を無理やり掴むと、強引に引っ張って、降りてきたばかりのエントランスを引き返した。

「どっか出かけるなら、これからはちゃんと連絡しろよ」
「でも、そういうの迷惑なんじゃないですか?」

 振り返ると、不安そうに眉を下げる穂乃花と目が合った。妙に男心をくすぐるその表情を見ているとおかしな情動がもたげてきそうで、真紘はすぐさま前を向いた。

「どこ行ったかわからない方が迷惑だ。次から連絡しろよ、わかったな」
「はい。わかりました」

 背後からクスクス笑いが聞こえてくる。極めて居心地が悪い。温かくむずがゆい何かが体を駆け巡る。思いっきり体を捻りたい気分だった。

「もしかして……心配してくれましたか?」

 違うに決まってる。
 だが力いっぱい否定するのも大人げないように思えて、真紘は黙秘を決め込んだ。
 代わりに諌めるように穂乃花の手を強く握る。
 自分より小さく柔らかな手が握り返してくる感触は、まるで皮膚に刻み込まれたかのように手を離した後も消えなかった。
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