無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚~甘く豹変した旦那様に捕まりました~【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】
世間話的な会話が、徐々に病院経営に関する専門的な内容へシフトしていく。さっぱりわからないので、由惟は黙々と食べ物を口に運ぶ。
(おいし〜)
脂の乗った中トロが舌の上でとろけていく。お刺身を食べるのも十年ぶりだ。というか魚自体、随分と久しぶりに食べた。貯蓄のためにしばしば自分の主菜を削っていて、魚や肉を食べるのは一ヶ月に一度という頻度だった。
舌鼓を打ちながら新鮮な魚の味わいを噛み締めていると、不意に真紘と目が合った。美しいかんばせを真正面で受け止めたことで、由惟の頬に熱が集まる。
「随分と美味しそうに召し上がりますね」
「はい!こんなにおいしいお魚を食べたのは初めてで、」
お箸が止まらなくて……と言いかけたところで、由惟はふと我に返った。
穂乃花は大病院のお嬢様だ。高級お刺身なんて毎日口にしているはず。初めてなんてありえない。
やらかしに気づいて一瞬固まった由惟だったが、すぐさま取り繕うように微笑みを浮かべた。
「えぇっと、成澤さんが素敵な方なのでいつもよりお料理が美味しく感じられて……」
「まあ」
両家の母親が喜色をあらわにした。
ひょっとするとなかなか恥ずかしいことを言ってしまったのでは?でも今更取り消せないので、表情筋を引き攣らせながら微笑み続ける。
すると、真紘がふっと息を吐いて表情を緩めた。口角が少しだけ持ち上がってわずかに、本当にわずかな変化だけれど、笑っているように見える。雪解けを感じさせるような微笑みに、由惟の胸はキュッと締め付けられた。
「嬉しいことを言ってくれますね」
そう言う割に真紘の口調は淡々としていたけれど、そんなことは些末に思えた。
(おいし〜)
脂の乗った中トロが舌の上でとろけていく。お刺身を食べるのも十年ぶりだ。というか魚自体、随分と久しぶりに食べた。貯蓄のためにしばしば自分の主菜を削っていて、魚や肉を食べるのは一ヶ月に一度という頻度だった。
舌鼓を打ちながら新鮮な魚の味わいを噛み締めていると、不意に真紘と目が合った。美しいかんばせを真正面で受け止めたことで、由惟の頬に熱が集まる。
「随分と美味しそうに召し上がりますね」
「はい!こんなにおいしいお魚を食べたのは初めてで、」
お箸が止まらなくて……と言いかけたところで、由惟はふと我に返った。
穂乃花は大病院のお嬢様だ。高級お刺身なんて毎日口にしているはず。初めてなんてありえない。
やらかしに気づいて一瞬固まった由惟だったが、すぐさま取り繕うように微笑みを浮かべた。
「えぇっと、成澤さんが素敵な方なのでいつもよりお料理が美味しく感じられて……」
「まあ」
両家の母親が喜色をあらわにした。
ひょっとするとなかなか恥ずかしいことを言ってしまったのでは?でも今更取り消せないので、表情筋を引き攣らせながら微笑み続ける。
すると、真紘がふっと息を吐いて表情を緩めた。口角が少しだけ持ち上がってわずかに、本当にわずかな変化だけれど、笑っているように見える。雪解けを感じさせるような微笑みに、由惟の胸はキュッと締め付けられた。
「嬉しいことを言ってくれますね」
そう言う割に真紘の口調は淡々としていたけれど、そんなことは些末に思えた。