無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚~甘く豹変した旦那様に捕まりました~【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】
表と裏
浮かれ気分のまま時は過ぎ、「あとは若い二人で」と定番っぽい文句に促され、由惟は真紘と二人で料亭の外にある日本庭園を散策することにした。
「どうぞ」
差し出された手に、おずおずと自分の手を重ねた。
日常的にメスを握っているせいだろうか。真紘の指にはいくつかタコができていた。ゴツゴツとした固い感触は、自分の手のひらとはまるで違う。父親以外の男の人と手を繋いだことなんて、生まれて初めてだ。
気もそぞろでぼうっと歩いていたら、慣れない草履を履いていたこともあって段差につまづいてしまった。
「きゃあ!」
頭からダイブするかと思いきや、真紘が抱き留めてくれたことで事なきを得た。
「す、すみません」
「いえ。怪我はないですか?」
「は、はい……」
由惟を支えても真紘の体はびくともしていない。極めてスマートに、由惟の体勢を整えるのを手伝ってくれた。彼の紳士ぶりに、また頬が熱くなる。
(素敵な人だなぁ……)
かっこよくて、優しくて。
真紘は今まで由惟の周りには存在しなかった男性だ。ついトキメキを覚えてしまうのも仕方なかった。
真紘と結婚できる穂乃花へ羨ましさすら募る。でも由惟は所詮、土深くに潜むもぐらだ。空を自由に飛ぶ鳥を羨んだところでどうにもならない。
やるせなさはため息と一緒に吐き出して、由惟は気分を上げようと顔を上げた。
秋らしい淡い色の空を背景に、真紘の後ろでは鮮やかに色付いた紅葉が風に揺れていた。
景色を見て美しいと思ったのも久しぶりだ。間違いなく、隣に真紘がいるからだ。枯れかけの花が水を吸って再び背を伸ばすみたいに、心が瑞々しさを取り戻していくようだった。
「どうぞ」
差し出された手に、おずおずと自分の手を重ねた。
日常的にメスを握っているせいだろうか。真紘の指にはいくつかタコができていた。ゴツゴツとした固い感触は、自分の手のひらとはまるで違う。父親以外の男の人と手を繋いだことなんて、生まれて初めてだ。
気もそぞろでぼうっと歩いていたら、慣れない草履を履いていたこともあって段差につまづいてしまった。
「きゃあ!」
頭からダイブするかと思いきや、真紘が抱き留めてくれたことで事なきを得た。
「す、すみません」
「いえ。怪我はないですか?」
「は、はい……」
由惟を支えても真紘の体はびくともしていない。極めてスマートに、由惟の体勢を整えるのを手伝ってくれた。彼の紳士ぶりに、また頬が熱くなる。
(素敵な人だなぁ……)
かっこよくて、優しくて。
真紘は今まで由惟の周りには存在しなかった男性だ。ついトキメキを覚えてしまうのも仕方なかった。
真紘と結婚できる穂乃花へ羨ましさすら募る。でも由惟は所詮、土深くに潜むもぐらだ。空を自由に飛ぶ鳥を羨んだところでどうにもならない。
やるせなさはため息と一緒に吐き出して、由惟は気分を上げようと顔を上げた。
秋らしい淡い色の空を背景に、真紘の後ろでは鮮やかに色付いた紅葉が風に揺れていた。
景色を見て美しいと思ったのも久しぶりだ。間違いなく、隣に真紘がいるからだ。枯れかけの花が水を吸って再び背を伸ばすみたいに、心が瑞々しさを取り戻していくようだった。