無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚~甘く豹変した旦那様に捕まりました~【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】
 十年ぶりに足を踏み入れた手芸専門店は、変わらず素晴らしい空間だった。端から端まで由惟の好きなもので埋め尽くされている。幸せだ。
 由惟はらんらんと目を輝かせて、あちこちを見て回った。途中何度も隣から「なんでも好きなものを買っていいぞ」と悪魔の囁きが聞こえてくるので、もたげる物欲を抑えるのに苦心した。

「クリスマスプレゼントにミシンでも買うか?」
「い、いえ!そんな高いものはいただけません!」
「そうか?別に大した値段じゃないだろ」

(いやいや……)

 五万円もする超高級ミシンをねだれるわけがない。激しく首を横に振ると、真紘は肩をすくめて笑っていた。

 由惟は申し訳ないと断ったのだが、真紘は気に留めることなく生地やら糸やら片っ端からカゴに入れてしまった。買い物袋はパンパンだ。こんなにお金を使わせてしまって申し訳ない。
 そう思っていたら、今度は高そうなアパレルショップに連れていかれ、さらに度肝を抜かれる羽目になった。

「彼女に似合いそうな服を十セットくらいください」
「へっ?!」

 絶句する由惟を、店員は満面の笑みで試着室へ連行していき。
 軽く二十着は試着し、店員オススメの一着――ラメが散りばめられたオフホワイトの毛足の長いシャギーニットと、同色の糸で花の刺繍が施されたベージュのペンシルスカートに着替え終えると、由惟は息も絶え絶えになっていた。着替えるだけでこんなに疲れるなんて知らなかった。
 
「昼飯食べたら化粧品でも買いに行くか」
「いえ、もう本当に、大丈夫ですから……」
「でも必要だろ?金はあるから気にするなよ」
「そ、そうですけど……でもそういう問題じゃなくて……」

 そもそも何かをしてもらうということに慣れていないから、恐縮しきりで精神的に疲れていた。加えて、真紘が重い荷物を全て持ってくれているから余計に申し訳ない。当の真紘は平然と持っているが、それでも。

「四階にレストラン街があったから、昼はそこで食べるか。穂乃花、なにがいい?」
「あの……あんまり高くないところで……」
「バカ」
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